エンドレスエイト
あなたにだけは信じて頂きたいですね、
ふざけた口調で逃げるように笑ってみせた古泉は、
ゆるりと震えた一拍後に、手のひらで顔を覆って泣いた。
かすれた声。絶望と甘美がないまぜになった告白。応えた俺。
あれは何度目の夏、
何度目の始まりで、何度目の終わりだったのだろう。
気付かぬうちにかすめ取られた一度目の夏の暑さを俺たちは知らない。
世界と対峙して世界から奪い取った筈の互いの熱も、
抱き合った一度目が何時なのかすら知る術はない。
一万何千の繰り返しの向こうに、遺棄された記憶は取り戻せない。
その夏に何を思ったのかも、俺は、俺たちは、ただ、
陽炎のように立ちのぼる微かな残滓がのどの奥にとどまり続け、
固まりは内から喉を声を侵食する。
焼き尽くされるばかりの今であっても確かめようと、
ただそれだけを思いながら得られたものは、
喰らい合うように触れ合う場所で共有する熱だけ、
それだけが全てだった
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ウロボロス。
20090819