海の七月

 幾度目かの誕生日・未来陛下と護衛

年はとりたくないもんだよな。溜息を付いた俺に護衛が笑いを堪えるような顔で休憩のお茶を差し出す。
「嘆くようなお年でもないと思いますが、陛下」
まあね。つか陛下って呼ぶな。
何がおかしいのかツボに入ったのかくすくすと笑う男を横目でみながら頬杖をついた指先を俺は頬に軽くすべらせる。
肌はシワもないしつややかとも言える。見てくれは護衛の言うように、ここ十年ほどまったく変わらない。
変わるのは髪の長さくらいで、服のサイズも変わらなくてとても経済的だ。着飾らない俺を王佐は嘆くけれど。
でも年はとりたくないよな。もういちどぽろりとこぼすと男の表情が変わった。
「――何か心配でも?」
気づかいが感じられる声に途端に気まずくなる。あーいや、ごめん、そういうんじゃないんだけどさ。
愚痴なら幾らでもこぼせるが、いざ正面から案じられると、座りが悪いと言うか居心地が悪い。
「ユーリ…?」
言えない。こんな、自分が変わっていくのが不安なのだと、
目の前の男に愛されたままの自分でいたいから、先がどうなるかが――怖い、などと。
きっと男は何だそんな心配を、そんなの何時までだって好きですよとか何とか、
星のきらめく瞳を細めながらうっとりするように笑い、歯の浮くようなセリフを言うのだろう。
それは決まっているのだ。だから。 そう言って欲しいからついうっかり呟いたなんて。口が裂けても言えない。――今はまだ。








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だだっこ陛下
(20120601)

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