その懺悔に祝福を (魔王誕生日/祝いの品/挙動不審な次男)
「花束と言うのも珍しいよな」
見上げた先には微かに緊張を漂わせた恋人の顔が見える。
「あのさ、無理にとは言わないんだよ?」
近しい者からですら年々規模が増大する魔王への生誕祝いに対して牽制のつもりで言った、あれは何時だったか。
『話でいいよ』
大げさな何かじゃなくて思い出話とかそんなもの。自分の話、故郷の話、この国の話とか俺が知らない事はいくらでもある。毎年物じゃ駄目とか、そんな事は言わないけれど、何かを話してくれればそれで良い。そうすれば山ほどの物を貰う事も無いと言う計算があった事は否めない。使うあても着るあても無い、付加価値だけを楽しむようなものは正直俺には不要だから。一石二鳥ですこぶる良いアイデアだと思ったのだその時は。かくして受け取るのに苦労する贈り物が集まることになる。何しろ話と言うのは俺が聞かなければならないものだから。受け渡しに時間が掛かり、時に騒動が起きる事に関して、眉間に皺を寄せた宰相からの叱責があったのは言うまでも無い。俺も少し迂闊だったとは思うけれど、皆から集まる話が楽しくもあったので、結局そのまま続いている。
そんなドタバタとは少し距離を置いたのが他でも無いコンラッドだった。彼の反応は皆とは少し違っていた。彼は微かにうなだれて、どうぞ何でもお尋ねください、と言った。いや待て、何でそう言う反応になるのか寧ろそれを尋ねたい。いや尋ねても明確な返事はなかったのだ。彼が気にした事と俺が聞きたい事は被っているようで実は違う事を、本当は彼自身も理解している筈だけれど、それ以来彼は毎年そんな風に俺に言う。最初は子供の頃の話を聞いた。普通に興味があったから。仲が良かった頃の兄弟の話とか色々と。少し寂しげになるけれど亡くなった親父さんの事とかも、こんな事がなければ聞かなかったかもしれないのでやっぱり俺は嬉しかった。けれどどんどん他愛の無い安全な話が無くなって。あれからもう何年だろう。俺たちは既に思いを伝え合ってそういう付き合いになっていて、だのにそれとこれとは別らしい。
ある意味面倒だったので回避していたが、話題も尽きてとうとうその辺りしかあとは残っていない。本当は俺に何もかも暴いて欲しいだけなのかと思う。暴いた上で一方的に断罪して欲しいだけなのかと。まな板の上の鯉。まな板の上の獅子。バカだなそんな事あんたが気にする事じゃないのに。どれだけ自分を軽んじれば気が済むのかとむしろそれを問い詰めたいが、いい加減この辺で終らせておくことにする。差し出された花に口付けて机の上に置く。傍らに立つ男の手を引いて椅子の脇に跪かせて。
「なあ、夜の帝王って具体的に何をどうしてた訳?」
びくりと震える愛おしい愚か者を抱きしめて、耳にささやくから。さあ。全部話したら、全部許すよ。昔の自分が許せないなら、通り過ぎてきた過去の一つ一つを全て、これから俺にすればいい。俺だけにね。
「自分の誕生日にまでサンタクロースになろうとする君ってお人よし過ぎるよね」
友人の呆れた口調が脳裏に浮かぶが即刻退場してもらう。面倒に思いつつもいつそうやって抱きしめてやろうかと少しだけ楽しみにしていた自分が居るのは誰にも内緒。
了
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聞かれもしないのに語れとも言われていないのに
脛に傷持つ身でありすぎる次男が勝手にヘタレているんですが
どうにかしてくださいwwwww
(20110104)