赤ん坊に魔法をかけてはいけません(赤子様面食い刷り込み疑惑)
『ゆーちゃんはね! ちっちゃい頃から面食いだったのよ!』と
むしろ自分の方がそうだと思われるような母親が、キラキラした目で力説する。
いや、母は確実に面食なのだ。
だったら俺がそうでもそれは遺伝ってヤツじゃないのかと言う問いは、
実にあっさり無視された。
子供の頃の俺は、美男美女を見てもへーとかふーんと言う反応しかしなかったらしい。
あれは確か幼稚園の時だったわねと言われても記憶の中の美人な先生は既に声も顔もあいまいだ。
テレビの画面に映る誰かと、そこには居ない誰かを比べているようだったので、
誰の事考えてるの? と聞いてみたら迷わず俺は『お星様!』と答えたらしい。
星は人じゃないし、仮に星と比べて言うのなら
一般人と変身もののヒーロー(変身後)を比べるようなもので、
問うべきはどうしてそうなったのかと言う美醜の価値観ではないだろうか。
星、と言う言葉だけで念の為に確認したらしいが、あの有名な不思議な王子様の話から来るものでもない。
ほらあの星の、バラとキツネとうわばみと砂漠に墜落したパイロットが出てくるサヨナラの話だ。
題名だけしか相似がないし、未だに俺にとってアレは、ぞうをのみこんだうわばみの絵しか思い出せない物語なのだが。
そういえば何だっけ、あのバラは、勝利のよくやってるゲームに出てくるような、
そうツンデレ、だ。アレはツンデレってヤツだったよな。始めのほうだからそれだけは覚えていた。
勝利はああいうのがイイんだよな――変なの、って。いやそれは兎も角。
だから俺は面食いなんかじゃありません。そう言ったんだがやっぱり聞いてはもらえない。
それでも『コレが美形!』と言う人は、俺の中では思い浮かばないんだけれどもな。俺の知らない
誰かが、知らないうちに魔法をかけて、見知らぬ誰かの面影を焼き付けて行ったのでもでない限りは。
ずっと後になって恋人になった護衛に、何だ全部あんたのせいじゃないか! と口を尖らせたら、
ひどく嬉しそうに笑っていた。まったくとんでもない星だ。
それでも俺しか住めなくて、出て行かなくてもいい星ならば、
別れの寂しさを教えてくれた、あのバラに免じて許してやる事にする。
ツンデレと言う言葉の解説をしてくれた友人には、
あんなに無駄に光ってるのはとても鬱陶しいよと呆れられたのだけれど、でも俺のだしと言えば、
好きなだけ占領すればいいよと、ついでに周囲の皆からも言質を取って、満場一致で治外法権をくれた。
呆れられても満足だ。服の裾を掴んで離してやらないのであれから俺の隣で星は相変わらずキラキラと、
困ったようにそして楽しそうに笑っている。
了
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赤子育成シュミレーション
(201208)