聖なる愚か者の驚愕
その考えうる全てに成り代わろうとするあまり、
大切な一つを彼は本気で忘れていた。
否、はじめから己にそれが許されるとは思わなかったのだ。
兄であり友であり相棒であり
名付け親という保護者である己の肩書きに、
もうひとつを加えるのを忘れた。
過ぎた望みと諦めたわけではない。
ただ本当に気がつかなかったのだ。
己の望みにも、
名づけ子から己に向けられる眼差しに
微かに違う色が混じり始めた事も。
終いには愛しい名づけ子が痺れを切らして、
彼の為に引きずってきた椅子を己の横に置き、
癇癪を起した子のような振る舞いで背もたれを叩きながら、
大きな声で彼を呼ぶまで、
それが己に許されると考えもしなかった彼は、
ほんとうに何も気付かないままだった。
了
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のっけから駄目な次男に涙を禁じ得ません(涙)
(20090802)